生活的道楽 奥井禮喜(ライフビジョン代表)

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 諷刺の力 
2017.06.13 No.0613103332 

 金沢の女性のアイデア、「コッカイオンドク」というアイデアは素晴らしい。

 国会質疑を議事録に基づいて音読する。当然ながら、まことにアホな答弁をしているのがミリミリわかるという寸法だ。

 これは「喜劇」あるいは「笑劇」の理論にぴったりである。あるいは、漫才のボケと突っ込みの関係でみてもわかる。

 ボケ側がとぼけた喋りをする。突っ込み側はわかっているのだけれど、とぼけてボケの喋りをなぞる。

 突っ込み側は、「あんたボケてまっせ」と意思表示しているのだが、ボケだからわからずに繰り返す。その状態が延々続く。観衆はご存知だから笑う。

 なるほど、木偶の大臣め! と叩きつけるよりも、木偶の真似を繰り返すことによって、十分に観衆に理解していただける。見事に諷刺が立ち上がるのですねえ。


 勉強 
2017.06.12 No.0612091352 

 50年前に購入した平凡社『現代思想シリーズ』(全22巻)は、1冊500円。たぶん薄給3万円程度であったから、無鉄砲な買い物だった。

 なにが無鉄砲かというと、そもそも字面は読めても中身の理解がとてもできなかった。いま読んで、お手上げの論文が少なからずなんだから------

 自慢できるのは、素晴らしいラインナップで、いま読んでも非常に有益なのであって、少なくとも投資の方向が正しかった。ハハハ。

 たまたま昨日は、『美の冒険』の中の「新しい音楽について」(ピエール・ブールーズ 1925〜2016 仏)を読んだ。

 音楽の世界で、美学的投企が不十分で技法や手法にのみ専心している事情に警鐘を鳴らしている。

 美学的投企が一筋縄でいかぬことは当然。作品を創造するための苦心・葛藤が半端ではできない。

 音楽に限らず、「どこへ行くのか」という深遠な方向性を常に見つめないと、ろくな仕事はできないからなあ。


 ライアー 
2017.06.11 No.0611080905 

 英語では、You are a liarといえば人格否定の強い意味があるそうだ。

 「トランプは繰り返し嘘をつく」というのは、すでにメディアでは定着しているみたいである。

 前FBI長官コミー証言が、今後どのような波及効果を及ぼすか。大統領に司法妨害を適用できるか? というのが焦点になりつつある。(これは、未決着の法律論争だという説もある)

 司法妨害は、それが成功しなくても司法妨害と認められれば、大統領弾劾という事態になる。

 ただし、共和党は上下院共に動かないだろうというのが目下の消息だ。

 それにしても嘘つきが政界の頂点に立っているのだから、全く剣呑である。わたしは、わが国のトップも似たように見えて仕方がない。


 hung parliamentこそ正常 
2017.06.10 No.0610081622 

 イギリス下院選挙にメイ首相が踏み切ったのは、EU離脱交渉において国内の明確な主導権を握る狙いであった。にもかかわらず、めざすはハード・ブレグジッドだという抽象的な方針以外に煮詰まった感じはない。

 メディアは、労働党コービン党首に過激左派という修飾語をつけたが、穏当なEU離脱方針と、社会保障改革を掲げるのが、なにゆえ過激左派なのか?

 なによりも、イギリス政局は2010年にhung parliament(過半数制する政党なく不安定議会)になって、以後、それを選挙で変えようとしたために、国民投票をすることになり、予想外のEU離脱になってしまった。

 そもそもhung parliamentになっているのは、世論が割れているからであって、数多の政策課題を抱えているのに、イメージ選挙で多数派を制しようなどと考えるのが邪道なのである。

 つまり、時間がかかっても、1つひとつの課題を議会で丁寧に議論する。それなくして、政治が円滑化することはない。厄介な問題があるから議会で論議するのであって、日本流のそそっかしい「決める政治」論にとらわれてしまうと、ますます政局は混乱する。

 日本の「決める政治」なるものは、イギリスよりもさらに性質が悪い。決めない方がはるかに上等な悪法を作ろうとしている。なにしろ日本の政局安定は、すでに議会が機能していない。

 その最大の原因は、「自由・民主」でなく、「権力」党である政党に多数の議席を与えた国民諸氏の選択眼なのである。


 国民と権力 
2017.06.09 No.0609155041 

 イギリス選挙戦開始当時は保守党の圧勝を予想する見解が多かったが、保守党は大挙議席を失い、過半数を獲得できず。EU離脱への采配を大胆に揮うというメイ首相の目論みが外れた。

 一方、労働党は大幅議席増で意気上がる。もちろん第2党だが、コービン党首は、この結果はメイ首相が辞任するに十分な理由だ、と余裕のある発言。保守党内部の内輪もめ再燃が予想され始めた。

 アメリカでは、前FBI長官コミー氏が上院公聴会で発言した。内容はすでに報道されていたけれども、トランプ氏に対する堂々たる一刺しだ。ワンマン経営者と大統領を同じように考えているトランプ氏は、またまた追い込まれた。共和党議員の冷たい視線も感じられる。

 英米と日本となにが違うのだろうか? 労働党なんてダメだと言っていたが、いまや政権復帰を狙える地平に戻った。コミー氏を前川氏に置き換えてみればいかがだろうか。

 英米の有権者は、デモクラシーにおいては、権力者が権力を軽々に扱ってはならないという見識を確立しているのだ、とわたしは思うのであります。


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